クラウドバンクAH社中小企業支援型ローンファンド――償還遅延と、外部情報から浮かび上がる仮説

クラウドバンクのAH社中小企業支援型ローンファンドおよび関連ファンドでは、AH社からの返済が滞り、複数回の一部償還を挟みながらも、現在も償還遅延の状態が続いています。
AH社の資産売却による一部償還は実施されているものの、依然として多額の未回収債権が残っており、法的手続きや担保売却を通じた回収対応が継続されています。

本記事では、関連データの最新状況を整理するとともに、外部情報から浮かび上がる点や、投資家に十分に開示されていない可能性のある情報についてまとめています。融資型クラウドファンディングにおいては、運営会社および開示情報の信頼性が投資判断の根幹となります。

本記事が、提示されている情報をそのまま受け取る前に、一度立ち止まって考えるための材料になれば幸いです。


※本ファンドに関する公式な経緯については、クラウドバンク公式サイトの「お知らせ」にて、時系列で整理されています。あわせて確認されたい方は、以下をご参照ください。

目次

AH社関連ファンドの償還遅延概要

AH社関連ファンド基礎データ

  • 資金使途:事業運転資金等
  • 遅延ファンド数:30件
    └2025年12月 一部全額償還済(5件)遅延ファンド数25件
  • 影響総額:41.9億円
    └2025年6月 一部償還(4.9億円)未回収額37.0億円
    2025年12月 一部償還(12.8億円)未回収額24.3億円
  • 運用ステータス:償還遅延中
  • 最終債権取得日:2024-01-31
  • 運用終了予定日:2024-02-07
  • 遅延通知日:2024-03-05

AH社関連ファンドの債権取得状況

融資額の推移と債権取得から遅延までの時系列

クラウドバンクのAH社中小企業支援型ローンファンドは、総額44億円の融資でしたが、公式サイトのデータから、段階的な融資であったことがわかります。また、1月末の債権取得からわずか1か月強で遅延が発生したとあります。

  • 2023-06-30 22億円(AH社ファンド)
  • 2023-07-14 6.3億円(AH社ファンド)
  • 2023-08-31 1.8億円(AH社ファンド)
  • 2023-12-29 6.6億円(AH社ファンド)
  • 2024-01-31 7.5億円(AH社ファンド)
  • 2024-03-05 遅延発生

対象の遅延ファンド一覧

クラウドバンクは同一案件で複数のファンドを組成しています。ファンド毎の債権金額、取得日等は以下の表を展開してご確認ください。

・※以下のデータは、公式開示情報を基に、償還遅延の全体像が把握できるよう時点別に整理したものです。
・最新の償還遅延中一覧はクラウドバンク公式サイトをご確認ください。

AH社の遅延ファンド一覧(償還遅延中)
ファンド名目標利回り債権金額(千円)取得日
不動産担保型ローンファンド第719号6.4150,0002024-01-31
不動産担保型ローンファンド第718号6.4150,0002024-01-31
中小企業支援型ローンファンド第976号6.4160,0002023-08-31
中小企業支援型ローンファンド第967号7.0100,0002023-07-14
中小企業支援型ローンファンド第966号7.0100,0002023-07-14
中小企業支援型ローンファンド第965号7.0100,0002023-07-14
中小企業支援型ローンファンド第964号7.0100,0002023-07-14
中小企業支援型ローンファンド第963号7.0100,0002023-07-14
中小企業支援型ローンファンド第962号7.0100,0002023-07-14
中小企業支援型ローンファンド第956号7.0100,0002023-06-30
中小企業支援型ローンファンド第954号7.0100,0002023-06-30
中小企業支援型ローンファンド第953号7.0100,0002023-06-30
中小企業支援型ローンファンド第952号7.0100,0002023-06-30
中小企業支援型ローンファンド第951号7.0100,0002023-06-30
中小企業支援型ローンファンド第950号7.0100,0002023-06-30
中小企業支援型ローンファンド第949号7.0100,0002023-06-30
中小企業支援型ローンファンド第948号7.0100,0002023-06-30
中小企業支援型ローンファンド第947号7.0100,0002023-06-30
中小企業支援型ローンファンド第946号7.0100,0002023-06-30
中小企業支援型ローンファンド第945号7.0100,0002023-06-30
中小企業支援型ローンファンド第944号7.0100,0002023-06-30
中小企業支援型ローンファンド第943号7.0200,0002023-06-30
中小企業支援型ローンファンド第942号7.0200,0002023-06-30
中小企業支援型ローンファンド第941号7.0200,0002023-06-30
中小企業支援型ローンファンド第940号7.0300,0002023-06-30
AH社の遅延ファンド一覧(全額償還済み)
スクロールできます
ファンド名目標利回り債権金額(千円)取得日償還日
中小企業支援型ローンファンド第982号6.6215,0002024-01-312025-12-23
中小企業支援型ローンファンド第981号6.6215,0002024-01-312025-12-23
中小企業支援型ローンファンド第980号6.1200,0002023-12-292025-12-23
中小企業支援型ローンファンド第979号6.1200,0002023-12-292025-12-23
中小企業支援型ローンファンド第978号6.1200,0002023-12-292025-12-23

なぜ、5本だけが先に償還されたのか

公開情報として開示されている各ファンドのプロジェクト概要を比較すると、以下の2ファンドは、不動産事業に係るファンドであったことが確認できます。

  • 中小企業支援型ローンファンド第982号 
  • 中小企業支援型ローンファンド第981号

仮に、売却された不動産がこれらファンドの担保となっていたのであれば、当該2ファンドが先に償還されたことは、一定の合理性を持つ判断と評価できます。
一方、次の3ファンドは太陽光発電事業に係るファンドとされています。

  • 中小企業支援型ローンファンド第980号
  • 中小企業支援型ローンファンド第979号
  • 中小企業支援型ローンファンド第978号

ただし、これら太陽光事業関連ファンドについて、現在も償還遅延が継続している他のAH社関連ファンドとの間に、回収状況の差を合理的に説明できるような明確な違いを、公開情報から読み取ることはできませんでした。

さらに注目すべき点として、全額償還されたこれら5ファンドは、当初の運用終了予定日で比較すると、現在も償還遅延が継続している他の25ファンドよりも、むしろ終了予定日が遅いファンドであったことが確認できます。

また、一部回収が行われた局面において、どのような基準で償還対象が選定されたのか、あるいはどのような優先順位が設定されていたのかについて、投資家向けに明確な説明がなされた形跡は公開情報からは確認できません。

償還の有無そのものではなく、償還の順序や配分がどのような考え方に基づいて決定されたのかは、投資判断の前提として本来共有されるべき重要な情報です。
この点が説明されないままであることは、情報開示のあり方として看過できない論点だと言えるでしょう。

外部情報の整理

1.アクセスジャーナルの記事

クラウドバンクが申請したことにより、ブルーキャピタルマネジメント本社ビルに対して東京地裁が強制競売開始決定通知(2025年1月)が下りたと報じられています。

2.ISCCを守る会の破産法157条報告書

ISCC(伊豆スカイラインカントリークラブ)のゴルフ場に関して、否認訴訟が提起されていることが確認できます。対象ゴルフ場への否認訴訟は 2023年6月12日付となっています。

本件においてクラウドバンクは当事者であり、訴訟時点で状況を把握していたと考えられます。
時系列を踏まえると、当該リスクを認識していた可能性を否定することは困難です。

破産法157条報告書記事の一部要約
  • ゴルフ場の所有権は令和元年6月にBCMに移転済み。
  • クラウドバンクがBCMへの貸付金の担保として抵当権・根抵当権を設定。
  • BCMへの譲渡担保は別会社の債務を担保するもので、ゴルフ場会社の債務とは関係がなく、対価なしで担保に提供されたことでゴルフ場が債務超過に陥った。
  • BCMの譲渡担保権は詐害行為否認の対象、クラウドバンクは転得者に対する否認の対象として、否認訴訟が提起されている(令和5年6月12日)。

3.FIT申請情報との整合性

伊豆スカイラインカントリークラブ(伊豆市上白岩)の太陽光設備について、FIT申請情報でブルーキャピタルマネジメントの関連事業として認定されていることが確認できます。

  • ファンド概要に記載の2013年度の認定と一致
  • 遅延のお知らせに掲載の「静岡県所在の太陽光」と一致
  • 代表所在地は「伊東市鎌田」申請対象には「伊豆市上白岩」も含まれる
  • 両地点は、直線で数km離れ、間には険しい地形があるため、受電経路は十数kmにも及ぶと推測されます。(送電線ルートの地権者同意取得が困難な状況とも一致)

2つの住所地の位置関係を図に表してみました。

出典:国土地理院の地図画像を加工したものです。

外部情報から浮かび上がる仮説

本件に関連する外部情報のピースを一つのパズルに組み立てたとき、次のような事実が浮かび上がります。

1.債務者と案件の特定

外部報道の競売情報と公式のファンドお知らせから、AH社関連ファンドの債務者はブルーキャピタルマネジメントである可能性が極めて高いと推定できます。

さらに、ファンド概要の認定取得時期や、遅延情報に記載された静岡県所在の太陽光発電所(着工前)の内容から、伊豆スカイラインカントリークラブの発電事業と結びつきます。

※正確な情報は公式の会員情報ご確認ください。

2.事業計画の実現性評価と地理的リスク

FIT認定情報によると、伊豆スカイラインCCの発電事業は「伊東市鎌田」を代表地番としつつ、設備は「伊豆市上白岩」に設置される計画です。

両地点は直線で数km離れ、間には険しい地形が広がります。受電経路は十数kmに及ぶと推測され、送電線ルートの確保や地権者同意の取得が容易でないことは明らかです。

ここで問われるのは、クラウドバンクが誇る審査体制が、こうした現実的リスクをどう評価していたのか。事業計画の可能性と現実の地理的制約の間には、大きな隔たりがあるのではないでしょうか。

3.否認訴訟の存在

伊豆スカイラインCCのゴルフ場に関する破産法157条報告書では、詐害行為否認の対象として訴訟が提起されていることが確認できます。クラウドバンクはこの当事者です。

  • 2023-06-12 否認訴訟提起
  • 2023-06-30 22億円の債権取得(AH社ファンド)
  • 2023-07-14 6.3億円の債権取得(AH社ファンド)
  • 2023-08-31 1.8億円の債権取得(AH社ファンド)
  • 2023-12-29 6.6億円の債権取得(AH社ファンド)

否認訴訟は、ファンドの債権取得時期よりも前に提起されており、クラウドバンクがリスクを把握していた可能性が高いことを示唆しています。

語られない物語――評価されるべきは、結果ではなくプロセス

外部情報をパズルのように組み合わせると、事業計画の実現性や否認訴訟リスクという、投資判断に直結する重要なファクターが浮かび上がります。

注目すべきは、訴訟リスクは債権取得前から存在していた可能性があるという点です。それを踏まえ、投資家に十分な情報が開示されていたのか――ここに、クラウドバンクの評価眼と説明責任が問われます。

もし事前にリスクを把握していたのであれば、なぜそれを伏せたのかという疑問が残ります。把握していなかったとすれば、そもそも事業計画の評価プロセスに根本的な欠陥があったことになります。AH社関連資産の売却を進める一方で、自らの募集プロセスに問題はなかったのか――投資家に説明すべきことは少なくありません。

いずれにせよ、投資家が安心して判断できる環境をつくるためには、法的リスク、地理的リスク、事業計画の実現性といった要素について、事後ではなく事前に、十分かつ検証可能な形で開示されることが不可欠です。

クラウドバンクには、まさにその点において、いま評価の目が向けられていると言えるでしょう。


繰り返される物語のなか
語られない言葉たち
それでもあなたは委ね続けるか
立ち止まった思考の先、サクラサク

SAKSUC
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この記事を書いた人

投資歴はおよそ10年ですが、最初は利回りやトレンドを追う程度でした。
本格的に調べ、試行錯誤を重ねるようになったのはここ数年です。
初心を忘れず等身大の経験を共有することで、投資や社会問題に悩む人の参考になればと思っています。

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