クラウドバンクのDR社バイオマス発電ファンドは、当初予定されていた償還期日を過ぎても融資先からの元本返済が行われず、総額10億円の償還遅延がが継続しています。
本件では、連帯保証人を被告とする貸金返還請求訴訟が進行しており、2025年10月28日に第一審判決が言い渡され、連帯保証人に対し遅延損害金等を含む支払いが命じられたものの、控訴の有無など今後の動向が注視されています。
また、担保資産の売却による債権回収の可能性についても引き続き検討が続けられており、具体的な償還・分配に向けた進展は確認されていません。
本記事では、DR社バイオマス発電ファンドの関連データをまとめています。
※本ファンドに関する公式な経緯については、クラウドバンク公式サイトの「お知らせ」にて、時系列で整理されています。あわせて確認されたい方は、以下をご参照ください。
DR社関連ファンドの償還遅延概要
DR社関連ファンド基礎データ
- 資金使途:バイオマス発電所開発に必要な造成費および事業運転資金等
- 遅延ファンド数:11件(内訳:DR系6件、非DR系5件)
- 影響総額:10億円
- ステータス:償還遅延中
- 最終債権取得日:2023-03-15
- 運用終了予定日:2023-04-07
- 遅延通知日※:2023-04-24
※DR社を主要な融資先とするファンドをDR系、DR社以外を主要な融資先とするファンドを非DR系と記載しています。
※遅延通知日は公式サイトのお知らせの最早日を記載しています。
融資先と関係者情報
| 略号 | 企業名 | 関係性 |
|---|---|---|
| DR社 | JEP | 融資先(債務者) |
| – | 伊藤忠丸紅住商テクノスチール | 連帯保証人とされていたが、関係を否定 |
DR社関連ファンドの債権取得状況
融資額の推移と債権取得から遅延までの時系列
クラウドバンクのDR社バイオマス発電ファンドは、総額10億円の融資でしたが、公式サイトのデータから、下記のように段階的な融資となっていたことがわかります。また、3月の最終融資の直後の4月に遅延が発生しています。
- 2022年08月 8億円 (DR社ファンド募集)
- 2022年12月 1億2,100万円 (DR社ファンド募集)
- 2022年02月 4,000万円 (DR社ファンド募集)
- 2023年03月 3,900万円 (複数の別ファンドの一部から融資)
- 2023年04月 遅延発生
DR社バイオマス発電ファンドの債権取得データ
クラウドバンクは同一案件で複数のファンドを組成しています。ファンド毎の債権金額、取得日等は以下の表を展開してご確認ください。
・下記の一覧表は、クラウドバンクのDR社バイオマス発電ファンドの債権取得状況を遅延時点の情報を整理したものです。
・最新の償還遅延状況は、クラウドバンクの公式サイトから償還遅延中一覧をご確認ください。
DR社の遅延ファンド
| ファンド名 | 目標利率 | 債権金額(千円) | 債権取得日 | 運用終了予定日 |
|---|---|---|---|---|
| バイオマス発電ファンド第377号 | 5.4 | 40,000 | 2023-02-17 | 2023-04-07 |
| 5.4 | 4,000 | 2023-03-15 | 2023-04-07 | |
| バイオマス発電ファンド第376号 | 5.8 | 37,000 | 2022-12-27 | 2023-04-07 |
| バイオマス発電ファンド第375号 | 5.9 | 84,000 | 2022-12-09 | 2023-04-07 |
| バイオマス発電ファンド第371号 | 6.1 | 331,000 | 2022-09-30 | 2023-04-07 |
| バイオマス発電ファンド第370号 | 6.1 | 100,000 | 2022-09-30 | 2023-04-07 |
| バイオマス発電ファンド第369号 | 6.1 | 369,000 | 2022-09-30 | 2023-04-07 |
他のファンドからDR社へ融資された案件の債権取得データ
クラウドバンクのファンドでは、募集時に示された企業以外にも資金の一部が融資されるケースがあります。その結果、DR社以外の募集案件で、遅延の影響が発生しました。その対象ファンドが以下の一覧となります。
別ファンドでDR社の影響を受けたファンド
| ファンド名 | 目標利率 | 債権金額(千円) | 債権取得日 | 運用終了予定日 |
|---|---|---|---|---|
| 不動産担保型ローンファンド第686号 | 4.3 | 3,000 | 2023-03-15 | 2023-10-06 |
| 不動産担保型ローンファンド第681号 | 5.8 | 7,000 | 2023-03-15 | 2023-07-07 |
| 中小企業支援型ローンファンド第938号 | 6.1 | 5,000 | 2023-03-15 | 2023-10-06 |
| 太陽光発電ファンド第2277号 | 5.0 | 5,000 | 2023-02-27 | 2023-08-07 |
| 太陽光発電ファンド第2276号 | 5.0 | 15,000 | 2023-03-15 | 2023-04-07 |
その他関連情報
週刊現代の記事(2023年8月)
週刊現代で取り上げられた記事では、丸紅出身の元エリート部長S氏が、自身の副業会社JEPを通じてクラウドバンクから10億円を融資を受けた事件として報じられています。S氏は勤務先のテクノ社が連帯保証しているように装い、偽造書類や偽の専務を同席させる手口を用いたとされています。
※記事を読む際は、書き手の立場や意図を踏まえ、注意しながら理解しましょう。
【追記】 刑事事件の報道について(2026年1月)
DR社バイオマス発電事業に関する内容が刑事事件として報道されました。
報道によると、容疑の内容は「有印私文書偽造・同行使の疑い」とされています。
これは、これまでのクラウドバンク公式により説明されてきた内容および、本ブログで整理してきた関連記事の内容と、概ね整合する内容と考えられます。


クラウドバンクの償還遅延から見える課題
融資スキームの不透明さ
クラウドバンクの投資案件では、募集時に示された企業以外にも資金の一部を融資しているケースがあります。つまり、投資家が「この企業のこの案件に投資している」と思っても、実際には複数の融資先に分散されています。
DR社関連のファンドでは、この仕組みにより償還遅延の範囲が拡大されました。
クラウドバンクに投資を検討する際は、この仕組みを理解して投資する必要があります。
審査体制と融資判断への疑問
DR社バイオマス発電ファンドでは、2022年8月以降に段階的な融資が実施され、2023年3月にも新たに3,900万円の融資が行われたとされています。ところが、そのわずか1か月後の4月には、投資家に償還遅延の通知が出されています。
融資実行直後に延滞が発生している点を踏まえると、クラウドバンク側のモニタリング体制やリスク検知の精度に疑問が残ります。公式に掲げる「融資審査会による全員一致での回収可能性判断」という方針との整合性も問われるところです。
クラウドバンクの審査体制
融資にあたっては、貸金業務取扱主任者資格、証券業の内部管理責任者資格、宅地建物取引士資格などを有する役職員や、日本クラウド証券のコンプライアンス担当者等によって構成される融資審査会を開催します。融資審査会では、融資先の資金使途となる事業の収益性、万一の場合の担保権実行等を考慮し、出席者の全員が当該債権の回収が可能であると判断したものに限って融資を承認いたします。日本クラウド証券では、融資審査会において承認された融資による債権を取得するファンドであることを確認し、稟議承認したファンドに限って募集の取扱いを行います。
クラウドバンクの融資の方針、融資・審査基準
募集ページに掲載していない融資債権であっても、掲載している融資債権と同様に融資審査会を開催し、資金使途となる事業の収益性、万一の場合の担保権実行等を考慮して回収が可能であるとして出席者の全員が承認したものに限って、当該融資債権を取得するものとしています。また、担保については、原則として強制執行または任意売却を行った際に融資総額を上回るものと評価されるものを受け入れており、その評価方法は原価法・収益還元法・取引事例比較法等によるものとしております。
段階的な融資の背景に潜む事情は
前述の段階的融資は以下の通りとなっています。
- 2022年08月 8億円 (DR社ファンド)
- 2022年12月 1億2,100万円 (DR社ファンド)
- 2022年02月 4,000万円 (DR社ファンド)
- 2023年03月 3,900万円 (複数の別ファンドの一部から融資)
この段階的な融資は、当初から計画されたスケジュールに基づくものだったのか、それとも他の何らかの事情が潜んでいるのか。その判断過程については、公表資料から明らかではありません。
今後の注目点:DR社バイオマス発電ファンドの遅延と業界への示唆
ファンド償還に向けての対応と信頼回復の道筋
DR社関連ファンドをめぐっては、関係者間での法的手続きが進行しており、その結果が債権回収や投資家への償還にどのような影響を及ぼすのか注目されています。
クラウドバンクにおいては、回収状況の進捗だけでなく、審査体制の検証や見直しを通じて、
投資家との信頼回復の道筋を明確にすることが求められるのではないでしょうか。
透明性と説明責任をどこまで徹底できるのかが、今後の運営の分水嶺となるでしょう。
投資家リスクと業界の信頼回復への課題
さらに、この事例では、運営者自身が想定外のリスクにさらされ、投資家が結果的に確かではない情報に基づいた投資判断をしたという構造になっています。
仮に投資家ばかりが損をするような結果となれば、ソーシャルレンディング業界において、信頼性の低いファンドが増え、市場全体の質が低下する懸念があります。
投資家が求めるのは単なる高利回りではなく、裏付けのある安心感と誠実な情報開示です。
そのため、業界全体としても、以下の取り組みが求められるのではないでしょうか。
- 必要に応じた法整備
- 審査の厳格化
- モニタリング体制の強化
- 透明性の向上
ソーシャルレンディング業界への示唆
今回の事例は、個別ファンドの運用にとどまらず、ソーシャルレンディング業界全体の信頼性や健全性を見直す契機とも言えます。投資家としても、利回りだけに目を向けるのではなく、運営体制や情報開示の透明性を確認する姿勢がより重要になるでしょう。
